叉焼入り饅頭
中華料理の店『杏杏(シンシン)』は神戸の下山手通にある。
七、八人座ればいっぱいになるカウンターと小部屋だけの店で、呉杏芳(ウーシンファン)さんが切り盛りしている。手伝っているのは、三人の子供たち。
彼女の両親は広東省の出身で戦争の前に神戸にきて、食堂を開いた。『東亜食堂』という名前の家庭料理の店で、華僑などの客で大層はやったそうである。
そこで昭和二十八年に生まれた呉さんは、子供のときから店の手伝いをした。当時の商売屋では、当たり前のことだった。出前はもちろんのこと、調理場にも立った。大きくなると、材料の仕入れに香港にもいった。
日本の男性と結婚し、両親が亡くなり、しばらくは店のことも忘れていた。しかし子育てが一段落すると、若いときの血が騒ぎ出す。それで十二年前に始めたのが『杏杏』だった。
ここの叉焼(チャーシュー)入り饅頭(まんじゅう)とトリ肉入り饅頭は、素晴らしくうまいが、以前は小柄な呉さんが体力を考え、週に一日しか作らなかった。それがすぐ売り切れになる。
そこで息子たちの出番となった。
長男が具を作り次男が饅頭にしていく。作り方は昔とほとんど変わっていない。昔より少し小ぶりになったのは、飽食の時代に合わせてのことである。
神戸には呉さんの両親の味を覚えている人たちが健在で、そういう人たちには「おふくろの味」に通じるものがあるのだろう。
注文すれば送ってくれる。
【杏杏】 TEL 078-252-1107
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2009年1月12日 | コメント/トラックバック(0) |
カテゴリー:川村二郎の食歳時記
